保護命令について

保護命令について説明します。保護命令とは、簡単に言うと、過去に暴力ないし脅迫を受けた相手から、さらに暴力ないし脅迫を受ける恐れがあるときに、その相手に対して裁判所の命令で、自宅から退去させたり、自分に近づかないようにさせたり、連絡していること等を制限することができる制度です。命令を受けた相手が、これに違反すると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
保護命令の種類は、➀退去命令、➁接近禁止命令(子への接近禁止命令、親族等への接近禁止命令もあります)、➂電話等禁止命令の3つです。
➀の退去命令は、相手に対して、2か月間、申立人と共に生活の本拠としている住居から退去させるものです。
➁の接近禁止命令は、相手に対して、6か月間、申立人の住居その他の場所において、申立人の身辺につきまとい、又は、申立人の住居、勤務先その他通常所在する場所の付近を徘徊することを禁止するものです。
➂電話等禁止命令とは、相手に対して、6か月間、
(a)面会を要求すること
(b)行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又は知り得る状態に置くこと
(c)著しく粗野又は乱暴な言動をすること
(d)電話をかけて何も告げず、又は緊急やむを得ない場合を除いて、連続して電話をかけたり、ファックスしたり、電子メールを送信すること
(e)緊急やむを得ない場合を除き、午後10時から午前6時までの間に電話をかけたり、ファックスをしたり、電子メールを送信すること
(f)汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付したり、知る得る状態に置くこと
(g)名誉を害する事項を告げ、又は知り得る状態に置くこと
(h)性的羞恥心を害する事項を告げ、又は知り得る状態に置き、又は性的羞恥心を害する文書・図画その他の物を送付し、又は知り得る状態に置くこと、
を禁止するものです。
申立てをすることができるのは、➀配偶者から身体に対する暴力等を受けた人、または➁生活の本拠を共にする交際相手からの身体に対する暴力等を受けた人です。
保護命令が認められるためには、➀過去に申立人が身体に対する暴力又は生命・身体に対する脅迫を受けたことだけでなく、➁今後も暴力により、生命身体に重大な危害を受ける恐れが必要です。さらに、➂配偶者暴力相談支援センターか、警察に相談したり、援助ないし保護を求めたこと(or公証人役場で供述調書の認証)が必要です。配偶者暴力相談支援センターは、大阪だと、大阪府女性相談センター、中央子ども家庭センター、池田子ども家庭センター、吹田子ども家庭センター、東大阪子ども家庭センター、富田林子ども家庭センター、岸和田子ども家庭センターのほか、大阪市、吹田市、堺市、枚方市、茨木市に各市が設置した配偶者暴力支援センターがあります。警察は住居近くの警察が望ましいですが、どこの警察でも構いません(自宅近くの警察でなければならないということはありません)。
申立の方法は、簡単です。裁判所のHPから書式をダウンロードしたものをプリントして、具体的な書き方もHPに掲載されていますので、それにしたがって申立書を記載し、陳述書・診断書・写真等と一緒に、収入印紙1000円と郵便切手(裁判所に電話で内訳を確認してください)を同封して、相手方の住所を管轄する地方裁判所(家庭裁判所ではありません)、申立人の住所、居所を管轄する地方裁判所、身体に対する暴力又は生命身体に対する脅迫が行われた場所を管轄する地方裁判所に郵送又は持参します。
申立後の手続は、まず申し立てた日又は翌日に申立人の審尋(裁判所で裁判官から話を聞かれる)があり、その1週間後に相手の審尋があります。最短で相手方の審尋の日に保護命令がなされます。