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はじめに|婚姻費用養育費|親権|夫からの離婚要求|財産分与|
不貞行為に対する慰謝料|家庭内暴力(DV)|面接交渉|別居のタイミング(離婚の準備)|モラルハラスメント|
Q&A 婚姻費用養育費|Q&A 面接交渉|Q&A不倫相手を懲らしめたい|
(はじめに)
女性は、結婚や出産により仕事を辞めた方も多く、その場合、夫からの生活費(婚姻費用、養育費)が滞れば、たちまち日々の生活費に困ります。婚姻後、働いている方も、家事と仕事を両立してきたため、夫より収入が少ないことが多く、夫からの生活費(婚姻費用、養育費)がなければ、やはり苦しい状況に置かれるでしょう。自分で夫に請求しても夫が容易に応じてくれないことも多いでしょうし、応じてくれても金額が不十分なことも多いと思います。女性の場合は、特に無料法律相談でも構いませんから、早く弁護士に相談されることをお勧めします。
離婚後は、子どもがいる場合には養育費を請求できますが、養育費や児童扶養手当だけでは不十分な場合が多く、離婚した女性には経済的自立が求められます。しかし、経済的自立といっても、就職してすぐに十分な収入を得ることは容易ではありません。
ですから、養育費、財産分与、慰謝料といった夫に対して請求できるものがある場合、諦めずに可能な限り多い金額をもらえるようにすべきです。
また、家庭内暴力(DV)を受けている方は、すぐに対処すべきです。警察への通報、一時保護施設への避難、裁判所への保護命令の申立を検討すべきです。「保護命令について」をご参照ください。
(別居のタイミング・離婚の準備)
家庭内暴力を振るわれている場合(DVの場合)は、診断書や警察への届け等のDVの証拠がほしいところですが、心身の安全には代えられませんから、すぐに別居すべきです(公的な一時保護施設や民間の一時保護施設への避難も検討してください)。DVがない場合で、夫に不貞行為(不倫)がある場合は、不貞行為の証拠(携帯電話の履歴、携帯電話・パソコンのメール、興信所の調査)を入手してから別居することをお勧めします。別居後に不貞行為の証拠を入手することは困難だからです。また、別居の際に持ち出すお金は、専業主婦の方の場合、可能な限り持ち出してください。夫が別居後すぐに婚姻費用(生活費)を支払ってくれない場合、調停や審判で婚姻費用を決めるまでに時間を要するからです。預金、保険、株等資産の管理を夫が行っていた場合には、少なくとも預金については銀行支店名、保険については保険会社、保険の種類、株については証券会社名のメモを取ってから別居した方が望ましいでしょう。なお、その他に、別居前に、夫がサラリーマンの場合は源泉徴収票、事業をしている場合は確定申告書の控えのコピーを入手しておくと、婚姻費用を決める際にスムーズになります。別居前に入手できるものを入手しておくと、後で交渉がスムーズにいったり、有利になりますので、別居前の段階から、別居のタイミングも含めて弁護士に相談することをお勧めします。
(モラルハラスメント)
精神的な暴力、言葉の暴力を指し、モラハラとも省略されます。相手の質問に答えない、ため息をつく、誰に食べさせてもらっている、舌打ちをする等の言動がモラルハラスメントに該当すると言われています。モラハラの事実を立証できた場合、離婚原因となるかどうかは(裁判所が離婚の判決を出してくれるかどうかは)、婚姻を継続しがたい重大な事由とまでいえるかどうかによります。したがって、日ごろ、夫から言われたモラハラの事実は、日記に記載したり、親族や友人にメールしたり、録音して記録し、多くの事実を裁判所に提出できるかどうかが重要となります。
(婚姻費用・養育費)
生活費(婚姻費用、養育費)は、双方の収入、子どもの人数・年齢により決まります。婚姻費用(離婚前の生活費)、養育費(離婚後の子供の生活費)は、家庭裁判所でも参考とされている「養育費・婚姻費用算定表」により、目安の金額がわかりますが(「養育費・婚姻費用算定表」はインターネットで調べることができます)、決して十分な金額ではありません。
調停で合意できなければ、審判や判決により裁判所が決めた金額となりますが、話合いの段階では、「養育費・婚姻費用算定表」による金額(2万円程度の幅のある金額)の上限以上の金額を目標とすべきです(もっとも離婚専門の弁護士がついている場合には双方が計算式で婚姻費用・養育費を算出するため、計算式による金額が上限となってしまうことが多いでしょう)。また、婚姻費用・養育費は、裁判所に申立を行った月から請求できるという扱いになっていますので(申立日が月末近くの場合はその月分がカウントされないこともあります)、婚姻費用や養育費をもらっていない方、不十分な金額しかもらっていない方はすぐに(婚姻費用分担請求)調停を申し立ててください。
(親権)
合意で親権者が決まらない場合、最終的に判決により裁判所が親権者を決めますが、親権は子どもの利益を考えて決められます。子どもの年齢が低いほど、母親が親権者となる傾向があります。子どもの年齢が低い場合、子どもを母親のもとに置いておくことが子供の教育・成長にとってよほど不利益となる場合でない限り、母親が親権者となるでしょう。
子どもの年齢・意思・状況以外に考慮される要素は、環境の継続性(従来の環境が変わるか)、親の経済状況・生活環境などですが、夫により収入が少ないこと、収入がないことは余り気にしないでいいでしょう。
(夫からの離婚要求)
夫に家庭内暴力(DV)、不倫(不貞行為)といった有責行為がある場合、夫が裁判所に離婚を求めても、裁判所は簡単には離婚を認めません。相当年数、別居期間が経過した事実があることを前提に、未成熟の子供の有無、離婚後の妻と子供の状況等を考慮して、ようやく認められる場合があるに過ぎません(当職の経験では別居して8年近く経過していても離婚が認められない高裁裁判がありました)。ですから、女性の側で、早く離婚したいという状況にない限り、夫から有利な条件が出てくるまで、簡単に離婚に応じないようにしましょう。
(財産分与)
財産分与の割合は、財産形成の寄与度によって判断され、共働きの場合は原則2分の1ですが、専業主婦の場合であっても2分の1とされることが多くなってきています。ですから、話合いでは、専業主婦の方でも2分の1を主張すべきです[裁判所の判決では、妻の婚姻財産形成の寄与度が低いと評価された場合、2分の1以下になることもありえますが、(裁判になって判決が出る前までの)調停前や調停での話合いでは最初から2分の1以下の割合を主張する必要は全くありません]。
(不貞行為に対する慰謝料)
慰謝料は、夫と相手の女性の双方に求めることができますが、被った精神的苦痛に対する慰謝料全額を、夫と相手の女性の双方から両取りすることはできません。たとえば、被った精神的苦痛に対する慰謝料全額が400万円だとした場合(ex判決で出た金額)、夫と相手の女性から合計で400万円までもらうことができるにすぎず、合計で400万円以上はもらえないということです。
もっとも、慰謝料の金額は、不貞行為の期間・程度・態様、不貞行為の婚姻関係への影響等により総合的に評価されますので、被った精神的苦痛に対する慰謝料全額は、判決が出れば確定しますが、判決が出るまでは幅のある金額で予想できるに過ぎません(例えば300万円から500万円)。
そこで、裁判になって判決が出る前までの調停前や調停での話合いでは、少なくとも予想される最大の慰謝料の金額を主張すべきです。
なお、不貞行為については、相手の女性だけでなく、裁判前に不倫を認めていた夫も裁判になると不貞行為を争うことが多いため、写真、メール、興信所の報告書等の証拠を準備することをお勧めします。
(家庭内暴力(DV))
家庭内暴力を受けた場合、ご自身の受けた肉体的・精神的苦痛は、他人には計り知れません。しかも、再び暴力を受けるかもしれないと思うと、夫が出す物音にも怯え、毎日の生活は耐え難いものとなります。そして、母親が精神的に不安定だと、子どもも精神的に不安定になりかねません。
DVを受けた場合、再発を防ぐためにも、夫婦間、親子間だけの問題にせず、第三者に知らせるべきです。ためらわず、すぐ警察を呼んでください。また、受傷箇所の写真を撮影し、病院に行って診断書を作成してもらって下さい。
暴力・脅迫の恐れを感じる場合は、公的な一時保護施設や民間の一時保護施設がありますので、避難することを検討してください。
また、暴力・脅迫により生命や身体に重大な危害を受ける恐れがある場合には、裁判所に対して、保護命令の申立を行うことができます。裁判所から保護命令が出されれば、相手に6か月の接見禁止命令、2か月の住居からの退去命令・はいかい禁止命令、電話・メール等の禁止命令を命じることができます。相手が命令に違反した場合には1年以下の懲役又は100万円以下の罰金を科せられます。相手が違反した場合、ためらわず警察に通報しましょう。
DVについては、「暴力→後悔・謝罪→暴力」という一定のサイクルがあり、次第に暴力が大きくなる傾向があることが指摘されています。DVが繰り返し起こっている場合には、一人で悩まず、公的な機関も相談を受け付けていますので、相談してください(大阪府の場合、大阪府女性相談センター、大阪府子ども家庭センターで、相談を受け付けていますし、大阪市も、配偶者暴力相談支援センターを設けて、相談を受け付けています)。
(面接交渉)
離婚により夫との婚姻関係が解消されても、元夫と子どもとの親子関係は解消されません。そこで、元夫には子どもと面接する権利があります。元夫の面接交渉を制限するためには、子どもの意思・状況、子どもへの影響等といった子どもの福祉の観点に反するといった理由が必要です。離婚の際に決められた面接交渉の頻度は月1回以上というものが多い傾向です。なお、調停により決まった面接交渉に反して、元夫に子どもを会わせなかったときにどうなるかについては、Q&Aを参照ください。
(Q&A婚姻費用養育費)
Q 婚姻費用・養育費は、いくらもらえるのでしょうか?また、いつからいつまでもらえるのでしょうか?
A 婚姻費用・養育費とも、双方の親の収入、子どもの人数・年齢により決まります。目安となる金額は、「養育費・婚姻費用算定表」により分かります。なお、「養育費・婚姻費用算定表」はインターネットで検索すると簡単に調べることができます。
婚姻費用をいつからもらえるかについては、調停申立時からとする裁判例と別居時からとする裁判例があり、判断が分かれています。調停申立時という考え方に立つと、調停を申し立てるまでの過去の婚姻費用をもらえなくなりますから、早く調停を申し立てた方がいいでしょう。婚姻費用は離婚するまでもらえます。
養育費は、離婚したときからもらえます。いつまでもらえるかは、原則として子どもが20歳になるまでです(大学を卒業するまでと定めることもできます)。
Q 調停や公正証書で定めた婚姻費用・養育費を支払ってくれません。どうしたらよいでしょうか?
A 調停調書や公正証書は、これらの書類に基づき差押を行うことができます。
相手の給与、預金口座、不動産等の相手の財産に対して差押を行うことができます。
給与の差押については、期限が到来した月の分だけでなく、婚姻費用は離婚時まで、養育費は子供が20歳になるまで、といった将来の分まで差押できます。また、給与は税金と社会保険料を引いた残額の2分の1の金額まで差押できます(なお、残額の2分の1が33万円より多ければ、33万円を超える分を差し押さえることができます)。
(Q&A面接交渉面会交流)
Q 調停で離婚し、私が子どもの親権者となり、養育費も定まり、元夫と子どもとの面接交渉の回数も1か月に1回と決まりましたが、子どもが父親に会いたくないと言っています。私も会わせたくありません。子どもに会わせなかったら、どうなるのでしょうか?
A 相手が家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所からあなたに対して履行勧告・履行命令が出されることが予想されます。もっとも、履行勧告・履行命令については、子どもを無理やり会わせるという強制力はありません。
次に、相手が強制執行を申し立てることが考えられます。この場合、一定金額の賠償金(1回の不履行について5から8万円という例が多いようです)を支払わされる可能性があります(もっとも調停や審判で定まった面会交流の条項が具体的に決まっていない場合には、面会の約束を守らなくても、条項が具体的に定まるまでの期間は賠償金を支払うことになりません)。また、損害賠償請求をしてくることも考えられますが、この場合も、損害賠償金を支払わされる可能性があるにとどまります。
結局、相手はあなたに金銭的請求はできますが、あなたが親権者である以上、強制的に面接交渉を実現させることはできません。
(Q&A不倫相手を懲らしめる方法)
Q 夫の不倫相手には、私が被った精神的被害を考え、相応に懲らしめたいと思います。どういった方法が効果的なのでしょうか?不倫相手が開き直って、お金がないと主張した場合はどうするのでしょうか?
A 方法は、内容証明郵便、訴訟提起、慰謝料の支払、差押です。弁護士名の内容証明郵便で慰謝料請求をされた場合、しかも内容証明郵便に数百万円の慰謝料請求と期限までに慰謝料を支払わなかった場合に訴訟提起を検討する旨が記載されていたら、通常の人は平気ではないでしょう(無視すれば、訴訟提起する前にもう一度、確認を兼ねて内容証明を出します)。訴訟提起すると、不倫相手に裁判所の封筒で裁判の期日の知らせと一緒に訴状が届きます。訴状と裁判の期日の知らせが届いて平気な人も少ないでしょう。話合いが成立した場合、不倫相手は相当額の慰謝料の支払をすることになりますから、懲らしめられたことになるでしょう。判決がでても慰謝料を支払ってこない場合、不倫相手の給与や預貯金の差押を行います。預金や給与を差し押さえられて堪えない人は少ないでしょう。不倫相手が開き直って、お金がないと主張したとしても、不倫相手から納税証明書の提出を受ければ収入額を確認できますし、通常、少なくても何らかの収入がある場合が多いでしょうから、判決を取得して少しでも差押されれば、真実、収入が少なかったとしても、不倫相手は堪えるでしょう。