男性のための離婚相談はこちら

はじめに婚姻費用・養育費慰謝料財産分与親権認知離婚原因面接交渉面会交流妻に言いたいこと質問したいことがあるとき裁判所から保護命令の通知がきたとき

(はじめに)
男性の場合、生活費(婚姻費用、生活費)や財産分与、慰謝料を請求される場合が多いと思います。
請求された場合、話合いで合意できなければ、最終的に裁判所の判断(審判による決定や訴訟による判決)となりますが、裁判所がどう判断するのか、裁判所の判断にはどれくらい時間がかかるのか、という予測を前提に、調停前の話合いや調停での話合いに臨めば、適切に対応できると思います。

また話合いや調停を進める際には、大きな方針を決めた方がいいでしょう。たとえば、解決までに時間がかかっても相手に支払うお金をなるべく少なくしたい方針か、逆に相場よりも多めにお金を支払ってでも早く離婚したい方針か、納得できるまで主張したい、相手に質問したいという方針か等です。

(婚姻費用・養育費)
 私は妻と別居後、一切、婚姻費用を支払っていません。婚姻費用分担調停で、妻は別居時からの婚姻費用を請求してきているのですが、私は支払う必要があるのでしょうか?私としては、婚姻費用を支払わなくても妻は生活できてきたのだから、少なくとも調停で婚姻費用を請求してきた時から支払えば足りると考えています。
 過去の婚姻費用をいつから支払う必要があるかについて裁判例は分かれています。別居時とする裁判例と、調停申立時とする裁判例等があります。最低限しか支払いたくない場合、相手が調停を申立した月からの婚姻費用を支払えばよいでしょう。もっとも、相手が納得せずに審判となった場合(調停が不成立となり審判手続に移行した場合)、裁判所が別居時からの婚姻費用を支払えという判断をする可能性もあります。

 婚姻費用や養育費を支払わずに、給与を差し押さえられた場合、給与のうち私に支払われる金額はいくらでしょうか?
 給与から税金と社会保険料を控除した残額が66万円以下の場合、残額の2分の1まで差し押さえられますが(残額の2分の1まで差し押さえられるといっても、婚姻費用や養育費の金額の範囲内です)、2分の1は受け取ることができます。但し、税金と社会保険料を控除した残額が66万円を超える場合(たとえば残額が100万円の場合)は、33万円を超える部分(残額100万円-33万円=67万円)を差し押さえられるため、33万円しか受け取れません。

 調停で定められた養育費を支払わなかったところ、相手に給与を差押されました。会社での立場がありません。支払期限が来た養育費については全額支払ましたが、差押を解除してくれません。どうしたらよいでしょうか?会社に頼んで差押より前に会社からの借入があったことにすればどうでしょうか?
 期限の到来している養育費分だけでなく、将来分の養育費(ex子供が現在8歳であれば20歳までの養育費)まで差押された場合、期限が到来している不払の養育費を支払っても、差押は解除されません。会社を退職すれば、給与が発生しなくなりますから給与の差押を免れますが(もっとも退職金についても差押の申立がされていることが多いでしょう)、会社を退職できない場合、差押命令の取消申立を行って争うことはできますが、差押を解除することは難しいでしょう。
勤めている会社が中小企業である場合に、給与の差押がなされた場合、会社に依頼して、差押前に会社からの借入があったことにして、差押を免れようとする事案もありますが、虚偽の事実を主張する自体、お勧めできませんし、相手から会社を被告として取立訴訟を提起された場合、会社を巻き込むことになります。会社が敗訴すれば会社が相手に対して直接支払義務を負うことになり、支払わなければ会社財産を差し押さえられることになりますので、やはりお勧めできません。
将来分の養育費まで差し押さえられた場合で、かつ、会社を退職できない場合には、相手に対し、今後、養育費を遅れずに支払うことを誠意をもって伝え、同時に会社での立場がなくなると勤労意欲減退(場合によっては左遷されたり、退社せざるを得ない状況になること)につながることを理解してもらい、相手に差押を取り下げてもらうよう交渉することを勧めます。また実際に給与が年間で50万円以上減額された場合には、減額の調停や審判を申し立てて減額を目指すことになります。

(慰謝料)
 不倫やDVがあったとして、妻から慰謝料請求されていますが、納得できません。裁判で争った場合に相手の慰謝料請求が認められるかどうか予想できるのでしょうか?
 不貞行為(肉体関係)やDVがなかったと争った場合、不貞行為やDVがあったと主張する方が事実を立証する必要があります。そこで、相手の主張が認められるかどうかは、不貞行為やDVの証拠(証言も含みます)を相手方が提出できるかどうかによります。
不貞行為であれば、女性とホテルを利用したときの写真や肉体関係があったことを推認させる内容の女性宛のメールや手紙を相手が入手していた場合、相手の主張が認められる可能性が高いでしょう。また、DVであれば、診断書の他、警察への通報がなされていた場合や子供が見ていた場合には、相手の主張が認められる可能性が高いでしょう(DVについて日記をつけていたり、友人に相談したりしたことが証拠とされることもあります)。なお、単に女性と食事をしたという程度であれば、不貞行為には該当しないため、頻度と程度にもよりますが、相手の慰謝料請求が認められる可能性は低いでしょう。

 私が不倫(不貞行為)したところ、妻は相手の女性に慰謝料請求を行い、相手の女性から300万円を受け取りました。それにもかかわらず、妻は、私に対しても、その女 性との不貞行為について慰謝料を求めています。私も慰謝料を支払う必要があるのでしょうか?
 不貞行為をした以上、あなたと相手の女性は、妻から慰謝料請求がなされた場合、慰謝料全額を支払う必要がありますが、あなたか、相手の女性のどちらかが慰謝料全額を支払った場合には、それ以上、支払う必要はありません。
そこで、相手の女性が支払った300万円が慰謝料全額であった場合、あなたは妻に 対して慰謝料を支払う必要はありませんが、300万円が全額でなかった場合(ex500万円が全額であった場合)には、残り200万円(500万円-300万円)を支払う必要があります。
しかしながら、慰謝料は、不貞行為の期間・程度・態様・それにより別居となったか等により総合的に評価されますので、被った精神的苦痛に対する慰謝料全額がいくらかということは、判決が出れば確定しますが、それまでは幅のある金額で予想できるに過ぎません。300万円という金額が慰謝料全額かどうかは、不貞行為の期間・程度・態様等により、ある程度は予想できるものの、裁判で判決が出るまでは確定しません。
不貞行為の期間が2、3か月に過ぎず、不貞行為が原因で別居に至っていない場合、その他の状況にもよりますが、300万円以上の金額を支払わなければならない可能性は高くありませんが、不貞行為の期間が5年にも及び、不貞行為が原因で別居に至っている場合には、300万円以上支払わなければならない可能性(300万円が慰謝料全額でない可能性)は十分あります。

(財産分与)
 家計をすべて妻に任せていたため、夫婦の財産がどこにいくらあるのか全く分かりません。どうしたらよいでしょうか?また、妻がタンス預金をしていた場合、どうやって立証すればよいのでしょうか?
 家計を任せていた場合、どういった預貯金や保険があるのか、分からないことが多いと思います。その場合、自宅に届く郵便物(銀行や保険会社からの郵便物)や通帳の引き落としの記載から、見当を付けることになります。
その上で、相手に対して直接問い合わせたり、弁護士会を通じて銀行に問い合わせたり(23条照会)、裁判所から銀行に問い合わせ(調査嘱託)をしてもらうようにします。
しかしながら、直前に預金からおろされたタンス預金であればともかく、毎月の生活費から少しずつ貯めたタンス預金の金額を把握することは経験豊富な弁護士であっても容易ではありません。

(親権)
 仕事があるため、3歳の子どもと一緒に住み、育てることは難しいのですが、親権はほしいと思っています。妻に対して、どのように交渉したらよいでしょうか?
 子どもと一緒に住み、子どもを教育し、養育する監護権というものがあります。監護権は親権に含まれているものですが、親権者と別に監護者を定めることもできます。監護者を別に定めた場合、親権者は、子どもの法律行為について同意を与えたり、取り消したりすることになります。
そこで、監護者を親権者と別に定めることができることを相手に説明し、相手が監護者となれば、子どもと一緒に住み、子どもを教育し、養育できることを理解してもらい、ご自身は親権者となるように交渉すればよいでしょう。もっとも、相手が、自分が監護者となり、あなたを親権者とすることに反対した場合、子どもが3歳という年齢では、あなたが親権者となることは困難でしょう。なお、私の経験からすると、子どもが幼稚園や学校に通う年齢になると、学校関係で親権者の同意が必要となることから、父親に親権を渡して、私は監護権だけでいいという母親は稀です。

(認知)
 不倫相手の女性が、私の子どもを妊娠したと言って、認知を求めています。認知を拒否したらどうなるのでしょうか?認知が認められると、私の戸籍にも記載されるのでしょうか?
 子どもが生まれる前に認知を請求されている場合、拒否することができます。子どもが生まれるまでの間は認知を強制されることはありません。子どもが生まれた後に認知を請求された場合、まず調停となりますが、調停においても認知を認めず、調停が不成立となければ、相手の女性から認知の訴えを起こされるでしょう。裁判においてDNA鑑定などで父親であると証明されると判決で認知を認める判決がなされまず。判決であっても、任意に認知を認めても、どちらの場合も父親の戸籍に認知した子の名前が記載されることになります。

(離婚原因)
性格の不一致や考え方の違いといった理由だけでは、なかなか裁判(判決)では離婚が認められないと聞きましたが、私は相場よりもお金を多く支払ってでも早く離婚したいと思っています。どのようにしたらいいのでしょうか?また、大目に支払う金額はいくらぐらいなのでしょうか?
 離婚の話合いの当初、離婚すること自体に反対していた妻も、調停が始まり、夫が裁判してでも、何年かかっても離婚すると言っていることを聞いたり、金銭的な条件の提示があると、次第に離婚すること自体は仕方ないと考え始め、金銭的な条件の話になってくることが多く見受けられます(但し、夫の不倫が原因の場合には相手の女性に対する感情からなかなか金銭的な条件の話にならない場合もあります)。したがって、方針としては、裁判ではなく、その前の調停で、離婚の意思が強いことを伝えながら、粘り強く金銭的な条件を提示して(もっとも最初から提示できる最高額を提示しない方がいいでしょう)、離婚の話をまとめるように交渉すべきです(万が一、調停で離婚の話にならなかったとしても、裁判中でも金銭的な条件の提示はできますので、和解で離婚できるように目指すべきでしょう)。大目に支払う金額については、相手の納得の問題でもありますが、別居期間の長さで裁判により離婚判決が認められる傾向がありますので、(離婚判決が認められる長さの)別居期間中に支払うべき婚姻費用の合計額が一つの目安となるでしょう。離婚が認められる別居期間の長さについては、3年から7,8年までと考え方に幅がありますが、短い方が支払う額が少なく済みますから、交渉上は、婚姻費用の2,3年分(子どもがいない場合 子どもがいる場合は婚姻費用と養育費の差額の2,3年分)と主張すべきでしょう。

(面接交渉面会交流)
Q 子どもとの面会をせっかく調停で決めても、親権者である母親が約束を守らなかった場合、裁判所の手続では、強制的に子どもと会わせることができないと聞きましたが、そうだとすると、子どもと会うことを諦めなければならないのでしょうか?
A 調停で決めた子どもとの面会を親権者である母親が守らなかった場合、裁判所は親権者である母親に約束を守るように勧告はできますが、強制力はありません。損害賠償請求はできますが(次のQA参照)、仕返しとして、養育費を支払わないという手段を取ると、給与等を差押される事態になります。親権者でない父親は弱い立場です。しかしながら、何回でも面接交渉(面会交流とも言います)の調停を申し立てることはできますし、調停では、調停委員、裁判官とも、子どもと会わせるように親権者である母親を説得しようとしてくれます(父親が子どもに暴力を振るったとか、子どもに不適切な言動を行った場合や子どもが中学生以上となり子自身の意思で会おうとしない場合は別です)。また、損害賠償請求も一度だけでなく、面接させてくれなかった回数に応じて請求することができますので、辛抱強く働きかけるべきです。*当センターでは、調停中になるべく早く子供との面接を実現させ、また家庭裁判所で観ることができる(最高裁判所が作成した)面接交渉のDVDをみてもらったりして、母親に面接交渉の意味を理解してもらい、子どもを父親と会わせることに慣れてもらうように試みます。調停中に母親の面接交渉に対する拒否反応を除くことができれば、調停後も(離婚後も)面接交渉がスムーズにいくだろうからです。

 面会交流の調停で決まった面会を子どもと暮らす母親が理由もなく守らなかった場合に、損害賠償請求できると聞きました。どのような場合に、どれくらいの金額を請求できるのでしょうか?
A 面会交流の調停や審判で決まった面会の条項があれば、どんな条項であっても、母親が約束を守らなかった場合に損害賠償請求できるというわけではありません。請求できるためには、面会の条項が具体的に定められ(ex面会交流の日時、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡し方法)、母親がすべき内容が特定できているときに限られます(最高裁判所平成25年3月28日)。金額は1回の不履行につき5万円から8万円という例が多いようです。

(妻に言いたいこと質問したいことがあるとき)
Q 私は、離婚の条件や金銭的な話をする前に、妻に言いたいこと、質問したいことがあります。しかしながら、妻に弁護士がついていると、弁護士から妻に直接連絡を取らないように通知されたり、調停手続になると、金銭的な条件の話になってしまうと聞きました。妻に直接、言いたいことを言ったり、質問したりすることはできないのでしょうか?
A 弁護士がついたり、調停手続となると、相手が同意しない限り、直接話をすることは困難です。相手に弁護士がつくと、弁護士は直接連絡しないように通知してきますし、これを無視して直接連絡を取ろうとすると、弁護士から法的手続きをとるぞといった抗議がきます。調停手続でも、相手の同意がない限り、直接話をすることはできません。しかしながら、調停手続では、相手の弁護士と違って中立な調停委員を通じて、相手に言いたいことを伝えてもらったり、質問してもらうことができます。調停がある程度、進めば、条件的な話になりますから、条件と関係の薄い話をしにくくなりますが、第1、2回目の調停であれば、調停委員を通じて、言いたいことを伝えてもらい、質問することをお勧めします。なぜなら、調停が終われば、もう言いたいことを言ったり、質問したりする機会はそうないだろうからです。また、調停において双方当事者が対席することに相手が承諾し、調停委員会(調停委員と裁判官)も双方当事者が対席してもよいと判断した場合には、同じテーブルを挟んで調停が行われることになります。この場合には実質的に相手と直接話をすることができるでしょう。

 

(保護命令)
 別居した妻が裁判所に対して保護命令の申し立てを行い、裁判所から保護命令の審尋期日呼出状が届きました。どうしたらよいでしょうか?
 まず出頭しないと保護命令がでる可能性が高いため、出頭すべきです。出頭したうえで、裁判官からの質問に対して適切に回答することになります。申立人が主張している暴力・脅迫が事実と異なるときは、申立人が主張している暴力・脅迫について、暴力・脅迫が行われたと主張されている前後の状況も含めてできるだけ具体的に反論すべきです。可能であれば出頭前に弁護士に相談した方がいいでしょう。また、申立人のウソを客観的に覆すことのできる証拠(ex部屋の壁に穴が開いていないのに、開いていると主張された場合は写真、何某さんが暴力を振るったところを見たと書かれたときは、何某さんに協力してもらって、見ていないという陳述書)がある場合は必ず提出しましょう。