熟年離婚(女性の側から)について

女性の側から熟年離婚をみた場合、よく聞かれる質問は次のとおりです。

①年金はどうなるのか?

②夫の財産が分からない。どうしたらよいのか?

③(夫がサラリーマンの場合)夫の退職金はどうなるのか?

(夫が事業者の場合)夫が経営している会社の株式はどうなるのか?

④夫は財産がないが、私は頑張って貯めた貯金がある。分けなければならないのか?夫は飲んだり遊んだりして、自分名義の財産が少ないが、私は夫のように遊ばなかったため、貯金できた。2分の1で分けなければならないのか。

⑤夫は定年退職ないし近く定年退職する。私は専業主婦ないしパートで収入が少なく、離婚した場合、今後どうやって暮らしていけばいいのか?

(お答え)

①年金のうち厚生年金(または共済年金)について、婚姻期間中のものは分割の対象となり、分割を求めた場合、2分の1で分けることになります。国民年金は分割の対象とはなりません。

②夫の財産が分からない場合、同居中であれば、年末に夫宛に届く証券会社や金融機関からの通知(ハガキやレター)に注意します。同居後であれば、これまでの居住地や勤務先から当たりをつけた〇〇銀行〇〇支店の取引明細の開示を求め、取引履歴に証券会社、保険会社、他の金融機関があれば、さらに記載のあった 証券会社、保険会社、他の金融機関 について開示を求めることになります。

全く不明であった場合、現在の住所地や過去の住所地、仕事先の近くの金融機関の支店について口座の有無及び開示を求めることになります。離婚裁判となった場合であれば、(裁判所が問い合わせることに合理性があると判断すれば)
裁判所から金融機関に問い合わせることができます。

③退職金については、婚姻時から別居時までの期間に対応する退職金が財産分与の対象となり、2分の1で分けることになります。

会社の株式についても、夫が婚姻期間中に設立した会社であったり、婚姻期間中に株式を売買により取得したものであれば(相続や贈与された場合を除く)、当該株式についても2分の1で分けることになります(株式を2分の1ずつ分けることは少なく、評価額の2分の1で分けることが多いでしょう)。夫が何株持っているか不明の場合でも、確定申告の際の「同族会社の判定に関する明細書」のページに記載されています。

④婚姻期間中の取得した財産は、相続や贈与で所得したものでない限り、どちらの名義であっても原則として2分の1で分けることになります。もっとも、例外的に夫が浪費していた場合に、妻の取り分を多くした裁判例もありますが、容易には認められないでしょう(もっとも、裁判所が容易に認めないことと、裁判をする場合に相手に求めないことは異なります。可能性がある以上、求めていくことになります)。

⑤夫の退職金について婚姻時から別居時までの期間に対応する退職金が財産分与の対象となり、2分の1を取得できることになりますが、それでも(あるいは退職金がなく)、現在の収入では離婚後の生活ができない場合、原則として2分の1の割合で分ける財産分与について扶養的財産分与を主張して、2分の1以上の財産を求めることになりますが、重い病気などの場合でない限り、容易には認められません。

熟年離婚に限らず、退職前後を通じて夫の収入(給与や年金)の方が妻より多い場合、離婚すると収入の少ない妻は困窮することが多くなります。

その場合、離婚すると、婚姻費用はもらえませんが、別居していれば婚姻費用をもらうことができますので、離婚することを拒否して争い、離婚の判決が出て確定するまで婚姻費用をもらうことを検討します。夫において、過去に不貞行為や暴力行為があれば、不貞行為や暴力行為がない場合に比べて、離婚判決が出るのは遅くなります(有責配偶者による離婚請求の場合)。

もっとも、最終的には別居期間が長くなれば離婚判決が出ることになりますので、生活レベルの見直しが必要となり、それでも生活できない場合には公的援助を検討することになります。