新しい養育費、婚姻費用の基準について 令和元年12月23日発表予定
11月13日、養育費、婚姻費用について、来月12月23日に、現行の算定表に代わって、新しい算定表が発表されるニュースがありました。
これは実務に大きな影響を及ぼすと思われます。
新しく発表される算定表(『新算定表』といいます)により、現在、養育費や婚姻費用について話し合っている場合(調停、裁判も含む)、これから養育費や婚姻費用について話し合う場合について、どういった影響を受けるか、予想したいと思います。
まず、新算定表に関連して、日本弁護士会がすでに提案している新しい算定表がありますが(日本弁護士会のHPで公開されています)、裁判所が来月12月23日に発表する新算定表と比べて、どの程度異なるのか不明です。そこで、発表前の現時点で詳細は不明であるという前提に立って話を進めます(大阪家庭裁判所、神戸家庭裁判所などで裁判官や調停委員に、新算定表の内容について質問したところ、発表されるまで分からないということでした)。
そこで、現在、①婚姻費用の調停中の方や、②離婚調停中で、これから養育費を決めようとする方は、
①新算定表の発表を待つという選択肢、
と、
②現在の算定表(ないしその前提となる計算式)で決めるという選択肢、
の2つがあります。
当職としては、
(1)増額の可能性を希望される方(多くは母親側でしょう)で、『現在、双方の前年度の収入だけから単純に養育費ないし婚姻費用の月額金額を決めようとしている場合』=単純に双方の収入から月額金額を決めようとしている場合であって、20歳を超えて大学卒業まで支払うとか、(小中高・大学について)公立ではなく、私学に進学する場合も支払うとか、塾代・予備校代も支払うとか、を決めようとしていない場合には、上記①の新算定表の発表を待つ方針を取った方がよいと思われます。新算定表の方が金額が上がる可能性があるからです。
反対に
(2)現在の算定表から導かれる金額よりも増額されない可能性を希望される方(多くは父親側でしょう)は、12月23日の新算定表の発表がなされるまでに、合意した方がよいことになります。もっとも、調停が係属中のケースでは、調停委員から、相手方に12月23日の新算定表の発表を待つことを提案されるでしょうから、発表までに合意することは難しいかもしれません。
12月23日に新算定表の発表がなされた場合、現在の算定表が法律により従わなければならないという決まりがないにもかかわらず、審判や裁判が現在の算定表(ないし現在の計算方法)に従っていることを踏まえて、実務が概ね現在の算定表(計算式)に従っている現状にかんがみると、新算定表が発表された後は、新算定表に従っていく可能性が高いと思われます。
では、すでに現在の算定表で婚姻費用や養育費を決めている場合に、令和元年12月23日に発表される新算定表に従うと、現在の婚姻費用や養育費よりも増額となる場合に、調停(ないし審判)を申し立てて増額請求した場合に、増額請求した月から新算定表にしたがって増額された金額となるのでしょうか。
この答えについては、増額請求を認める1つの基準が、婚姻費用ないし養育費を定めた際の事情と比べて(定めた際に当然予想された範囲を超えて)事情が異なったといえるか、どの程度異なっているか(新算定表によるとどの程度増額することとなるか)、と思われますので、ケースごとに、裁判所が考慮することになると思われます。
- <「当センター弁護士のご紹介」前の記事へ
- 次の記事へ「養育費、婚姻費用の新しい基準について」>